社会保険労務士(社労士)で年金アドバイザーの富所正史です。

今回は、「医師の診断書と社会保険労務士」です。

障害年金は100%書類審査です。障害年金を申請する本人が日本年金機構に行き審査を受けることはありません。書類の中で最も重要な書類は、医師の「診断書」。この診断書によって障害年金が受給できるかどうか決まると私は思っています。

診断書によって、障害年金が受給できるかどうかが決まる、つまり、診断書の内容が重度に記載されていれば認定される確率は高くなります。ですから、診断書には、症状を重く書いて欲しいという心理が、申請する本人にも、社会保険労務士にも働きます。

一方、医師は、患者を治すことが使命ですから、少しでも病が軽減し、治療の効果が現われることを期待します。病状が少しでも軽減するために医師は奮闘しているのに対し、少しでも重い病状の診断書を期待する社会保険労務士、この関係は対象的です。

1週間程前に、私の事務所に医師から電話がありました。障害年金を申請する本人が書いた日常生活の様子、具体的には、「適切な食事」「身辺の清潔保持」「金銭管理と買い物」など全部で7項目がかなり重度に記載されているが、医師である自分の判断とはかなり乖離(かいり)している。本当のところはどうなんですか?という問い合わせでした。

体調に波があるとき、大変なときはどうだったかを思い起こして書いて下さいと私は本人にアドバイスしました。本人は、家族の支援と協力があるからできていることでも、単身で生活するとしたらできるかどうか?困難だったときを思い起こし記載し医師に情報提供しました。

医師は、「患者が体調の良いときと悪いときの差が少しでも少なくなるよう、体調の良い状態ができる限り長く継続できるようにと治療に努めている。総合的に判断し、本人からの申し立てとは異なる診断書(軽い病状の診断書)になるが、それは了解しておいて下さい」とはっきり言われました。

あらためて、患者に向き合う医師の思いを知ることができました。依頼者の日常生活状況など、医師に情報を提供することは私たち社会保険労務士の仕事ですが、医師の診断とある程度整合性のとれた本人の情報を提供する必要があると思わされたのです。

障害年金を受給できることは、その人がその人らしく生活できる手段の一つに違いありません。そのためにも、医師と良い関係を保ちつつ、日常生活に困難をかかえている人たちの障害年金に積極的に取り組んで行きたいと思っています。(2022.12.9)