社会保険労務士(社労士)の富所正史です。
障害年金④、今日は、初診日の証明ができないときについて詳しくお伝えします。
障害年金で最も高い壁は初診日を証明することで、初診日とは、病気やケガで初めて医者に行った日のことだと前回お伝えしました。
ケガの場合、何月何日にケガをし医者に行ったかが明確ですが、精神障害の場合などはっきりしないケースが結構多いです。傷害年金を請求したいと思ったが、初めて病院に行った時から20年経っていた。初診日はいつだったか本人も思い出せない。かろうじて20年前に行った病院を思い出し、初診日の証明書をお願いしても「カルテは消去したので証明はできません」と言われてしまう。
ところで、なぜそれほどまでに「初診日」が重要なのでしょう?
車の保険でも、事故がいつ起きたかは重要ですね。事故が起きてから慌てて保険に加入しても保険の対象になりません。
傷害年金の場合も同様で、「初診日」を事故が起きた日とするということです。
この初診日を決めることによって、
①初診日より前に保険料をきちんと払っていたかどうか調べ
②初診日に国民年金に加入していたか、それとも厚生年金に加入していたか判断し
(国民年金は1,2級、厚生年金は1,2,3級とあり、厚生年金は受給額も手厚い)
③初診日から1年6ヶ月後を「障害認定日」と定めています。ですので初診日が特定できないと傷害認定日も定まらない。
このように初診日を定めることによって次の段階に進むことができるのです。初診日が特定できないと何もできないということになります。
ところで、この重要な初診日が特定できない場合があります。その時はどうしたら良いのでしょう?
その時は次のようにします。初診日を証明できる医師からの証明書がもらえなかったという申立書を作成します。正しくは「受診状況等証明書が添付できない申立書」
そしてこの書類に医者に行った初診日がわかる書類を添付するのです。例えば、「身体障害者手帳」「身体障害者手帳を申請した時の診断書のコピー」「当時の診察券」「当時の通院時の領収書」など。とにかく心当たりを探しまくり、初診日当時に通院していたことがわかる証拠を一つでも見つけるのです。
私は、カルテが消去され、初診日を証明する「受診状況等証明書」を医師から書いてもらえなかったとき、私に傷害年金の手続きを依頼した方が、身体障害者手帳を申請した時の医師の診断書が保健センターに保管されているはずと思い訪問し、その診断書のコピーを入手しました。そこに、初めて行った病院名が記載されていたのです。あきらめないであらゆる可能性を探ってみることがとても重要だと気づいたことでした。
さらに、初診日の証明ができなかった場合、2番目に行った病院に問い合わせます。そこで初診日が見つかることがあります。1番目の病院からの紹介状を2番目の病院に提出していることがあります。その紹介状が残っていて1番目の病院に行った日を特定できればそれが初診日の証明になります。2番目の病院で「受診状況等証明書」を書いてもらい、紹介状のコピーを添付すればOKです。
さらに第三者証明と言って、初診の頃を知っている第三者に「初診日に関する第三者からの申立書」を書いてもらいます。例えば、遠い親戚(三親等以内の親族は×)、知人、職場の上司、民生委員など。しかし、この第三者証明ですが、依頼しても何かあったときに責任が取らされるのではないかとの恐れから、書いていただけない場合もあります。その時は、書いて下さる方に、傷害年金専門の社会保険労務士と一緒に行っているので心配ありませんと言ってお願いしてもらっています。(2022.2.8)