社会保険労務士(社労士)で年金アドバイザーの富所正史です。

今日は、「全く別だった国民年金と厚生年金が一緒になった、なぜ?」について。

国民年金に加入するか、厚生年金に加入するかは、本人が自由に選択できません。会社員・公務員は「厚生年金」、学生、自営業、退職した人などは「国民年金」のように、その人の立場や職業によって決まってしまいます。

一言でいうなら、会社のような組織の中で働く人は「厚生年金」、そうでない人は「国民年金」と覚えて下さい。

現在、1階は国民年金、2階は厚生年金のように1軒の家に例えられていますね。「国民年金加入者=国民年金のみに加入」「厚生年金加入者=国民年金と厚生年金2つに同時に加入」これが、現在の姿。厚生年金加入と言いますが、厚生年金だけではなく国民年金にも同時に加入しているのです。

もともと「国民年金」と「厚生年金」は全く別物でしたが、昭和61年、一緒になり、1階は国民年金、2階は厚生年金となったのです。別だった「国民年金」と「厚生年金」が一緒になり1軒の家に住むようになったということです。昭和61年ですから平成になる少し前のこと。

それはなぜか?国民年金が誕生した昭和36年頃は、会社員が加入する「厚生年金」と、自営業者が加入する「国民年金」の加入者数はほぼ同数だったようです。

しかし、その後、日本は工業が盛んになり会社で働く人がどんどん増えて厚生年金に加入、逆に国民年金に加入する農家のような自営業者はどんどん減りました。

私は、新潟県でコシヒカリの米農家で育ちました。小中のクラスメイト8割は米農家、田植え休みと稲刈り休みがそれぞれ7日間ほどありました。それほど農家は多かったのです。今では、クラスの中で農家の子は1割いるかどうかだと思います。

国民年金ができた頃、会社員と自営業者は半々だったのが、やがて昭和50年代になると7割がサラリーマン(厚生年金)、自営業者(国民年金)は3割になってしまいます。

厚生年金は給与から天引されますが、国民年金は自分で保険料を納めるので納付しない人も多い。私は農家の出身だからわかるのですが、農家は毎月のように現金収入がありません。保険料を払いたくてもが払えない。自営業者の人数が減り、さらに納付率も落ち、国民年金がピンチになります。

このままでは、国民年金は破綻するかもしれない。そこで、加入者がどんどん増えている厚生年金に国民年金を支えさせるという方法を考えたわけです。

この2つの制度を一緒にして(1軒の家)にして、1階は20歳になったら全員が加入する国民年金、2階に厚生年金としたのです。厚生年金と呼びますが、厚生年金加入者は国民年金にも同時に加入しています。

その背景には、高度成長期の日本において、工業が盛んになり、会社員が増え、厚生年金加入者が増、逆に農業のような自営業者が減り、国民年金が破綻の危機に立たされた。これを救う方法として厚生年金に国民年金を支えさせるという方法で2つの制度を一つにしたのです。(2022.8.4)