社会保険労務士(社労士)の富所正史です。

先日、都内の私立保育園から、「富所さんが手がけてくれた就業規則にマタニティハラスメントが無いので加えて欲しい」という連絡がありました。年に一度の監査で指摘されたのです。

仕事として「就業規則」に最も深く関わっているのは社会保険労務士(社労士)だと思います。弁護士も就業規則作成に関わっていますが、人数からいうと圧倒的に社労士が多く、就業規則=社労士といってもいいかもしれません。

パワハラ、セクハラは盛り込んでいますが、「マタニティハラスメント」まで思いが行きませんでした。私もうっかりしていました。最近の法律改正でマタニティハラスメントを定めるのは義務になっているのです。

マタニティハラスメント、例えばこんなケース。

■契約を更新することに決まっていたが、妊娠の報告をしたとたんに契約が更新されず退職になった。

■1年間の育休を申し出たら、「実は、最近会社の経営が厳しくて、何とかしなければと思っていた」と経営者から言われ、やがて解雇された。

このようなケースがあったとしたら、これは違法となります。妊娠、出産、育児などを理由に不利益な扱いを行うと違反となり、労働基準監督署の指導が入ったり、事業所名が公表されたりします。

これもうっかりしていたのですが、パート社員(職員)の雇用契約書の中に、必ず「相談窓口」を盛り込まなければなりません。これも義務化。困ったらどこに相談に行ったら良いかを明確にしてパート従業員に通知しておく必要があります。

2019年4月1日から、経営者には、年に10日以上の有給休暇(有休)が与えられる従業員に、「年5日間の有休を取得させることが義務」づけられています。違反すると一人に対し30万円以下の罰金、10人いたら300万円。罰金は経営者に科せられる。責任者から「年度末3月に一斉に有休を取ると仕事に支障出る。早めに計画的に有休を消化して欲しい」と言われている従業員も多いはずです。

法律の改正によって就業規則の内容ががどんどん膨らみ、分厚くなった就業規則を従業員はますます見なくなるという悪循環を生んでいます。この解決には、必ず記載しなければならない内容は漏らさず掲載し、そうでない内容はそぎ落として行く作業が必要だと痛感しています。(2021.11.19)