社会保険労務士の富所正史です。
訪問先で定年退職後再雇用の給与について質問を受けることが結構あります。

「今度、うちの従業員で60歳定年退職する人がいるんです。退職後は、再雇用で65歳まで1年ごとの契約を更新するですが、給与は前の6割くらいでいいんですかね?」このような質問です。

その時、確認することがあります。再雇用される方は、今までと同じ仕事内容かどうか、1日の勤務時間、週の勤務日数、責任の度合いなどです。

独立行政法人政策研究・研修機構の2019年調査によると、定年後の仕事内容について、44%が「定年前と全く同じ仕事」、38%が「定年前と同じだが、責任が軽い」と回答。つまり、82%が定年前と同じ仕事との調査結果,この数字の大きさに驚かされます。10人のうち8人は仕事内容が同じ、しかし給与が半分になったなどと聞くことがあります。

60歳定年で定年直前の賃金を100とした場合、定年後の給与の平均は75%です。どこまで下げると違法なのか?名古屋地方裁判所は昨年10月、「基本給が定年前の6割を下回るのは不合理」と認め、勤務先に支払いを命じたという報告があります。

これらから、私は、定年前と同じ仕事内容で、働く時間が従前と同じなら給与は7割、仕事内容が同じで、多少責任が軽くなり、勤務日数5日が4日になったような場合に6割を提案しています。

定年退職後すぐに体力が衰えるわけもありません。従業員の長年培った経験は企業にとっても財産です。人件費を抑えたいとの企業側の思いはわかりますが、「再雇用という理由だけで、給与を半分にすることは避けましょう!」とアドバイスしています。(2021.1.25)