社会保険労務士(社労士)年金アドバイザーの富所正史です。
起業して最初の壁は、すべての費用が自分持ちということ。交通費、研修費はもちろん、プリンターのカートリッジからコピー紙1枚に至るまですべて自分持ち。
特に自宅の最寄り駅、千葉ニュータウン中央駅からお茶の水の事務所まで片道1300円の電車代は私を苦しめました。自宅からバスを利用したら1500円にもなります。この1往復3千円近い電車賃を私は、あえてパスモを買わず、毎日、切符を買って乗車していました。月に4~5万円はかかっていたと思います。
駅の券売機に千円札が吸い込まれて行くたび、「いつか、このお金を回収できるよう頑張る!」という、宣言というか自分への誓いのようなものを毎朝発していました。パスモを使うとこの緊張感がなくなる気がして開業後1年間は、毎日、千円札を投入して電車に乗っていたのです。
従業員として働いていた時は、仕事で都心に行った時の交通費や購入した消耗品の代金も忘れず職場に請求していました。1日2~3万円の研修を自分のポケットマネーで受講するという発想は全くといっていいほどありませんでした。
しかし、起業した途端に今まで従業員だった思考が変わります。このお金は、将来につながる投資なのかどうかで判断するようになります。1日3万円の研修が自分にとって必要か、それが将来に生かせると確信したらためらわず申し込むでしょう。
私の友人の社会保険労務士は、起業した1年目、大阪で開催された3日間、30万円の講習に参加しました。開業後、事業を軌道に乗せるノウハウを伝授してくれる研修です。関東からの交通費、ホテル代自腹ですから、全部で35万円ほどかかりました。
この3日間の研修がどれほど役立ったかはわかりませんが、しかし、3日間で30数万円払っても参加するという、その意欲、前向きな気持ちがその後を決めると言っていいのかもしれません。友人は、現在、大きな駅前のビルにオフィスを構え、従業員を数名雇って事業を拡大しています。
従業員でいたときは、自分への投資にお金を使うという発想がありませんでしたが、開業して、一番大きく変わったのは、自分や仕事に対する「将来への投資」としてお金を使うという視点です。
最近も広告宣伝費として20万円かかりました。一人で事業をやっている私にとって、この金額は大きいですが、これも大切な投資だと思うと決断ができました。
独立開業して変わったことは、将来への可能性という点から投資してお金を使うという発想です。これは、自分に自信を与え、人生をとても豊にしてくれています。(2021.6.3)