社会保険労務士の富所正史です。
社会保険労務になって出会う一番のもめ事は、パートの有休です。実際、この件の相談が多いです。
朝日新聞に掲載された「職場のホンネ」欄の記事を掲載します。
雑貨販売会社で事務のパートで働いています。週5日、1日4時間の勤務。入社してから6ヶ月たっても、有給休暇が与えられないため上司に聞くと「パートには有休は与えていない」と言われました。たとえ、パートでも、法律上は有給休暇をもらう権利はあるはずです。上司に反論しましたが、「誰からも苦情はない。騒ぎ立てるとクビになる」と言い返されてしまいました。納得がいきません。(大阪府50代女性)
有休は、正しくは「年次有給休暇」と言い、休んでも賃金が支払われる休暇のこと。雇い入れの日から6ヶ月勤務し、この6ヶ月間に8割以上勤務した場合に取得できます。上記の女性の場合、6ヶ月経過したら10日付与。4月1日採用なら、6ヶ月後の10月1日に10日付与されます。翌年10月1日に11日、翌々年に12日と増加。
パートの場合、働いた日や時間に対して給与が支給されるので、働いていないのに給与を支給するという感覚を経営者は持てないのです。有休の目的が、「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障する」ための休暇ですので、週3日勤務なら、残りの4日で心身の疲労は解消するでしょう!1日4時間程度の労働なら疲労の蓄積はないでしょう!と思いますね。
こんなに融通を利かせてあげているのに、有休まで言ってくるなどとんでもないと考える経営者もいます。労働基準法で定められているとは言え、実際の現場ではなかなか難しいものがあります。
私の家族でパートで働く者がいますが、週3日(4日の週も)、すでに6年勤務していますが、有休は1日も取ったことがありません。法律でパートに有休があることは知っていても、「パートで有休を取る人は職場で一人もいないし・・・」などと言っています。
私は、有休のことで、ことさらに経営者と衝突し、トラブルを起こすのは得策でないという考えです。有休は、労働基準法で保障されているのだから、権利を主張すべきという考えもありますが、数日の有休のために経営者と対立し結局は職場にいられなくなった、今でも険悪の関係が続いているということになったら、本人にとって本当に良いのかどうかということになります。
その伏線として私の20代前半のパート社員の時の体験があるのです。週5日、東京都内で車での配達を始めました。勤務して6ヶ月の頃、「最初の条件と違う!」と社長にくってかかり、会社を追い出されてしまいました。結果、働いた1ヶ月分の給料がもらえずそのまま会社を去ったという経験があります。
一時的な感情でことを進める痛手を痛感したのです。記憶から消してしまいたいできごととして残っています。経営者・責任者と向かい合うときは冷静に、感情が先行し過ぎてはいけないことを学びました。お互いに認め合い、支えあって仕事ができることこそ喜び、自分の権利を感情的に主張し過ぎてはいけないというのは、こうした苦い体験があるからです。
次回は、経営者や責任者に有給休暇を申請する時のテクニックを書きます。(2021.9.17)