社会保険労務士(社労士)の富所正史です。

少し時間が経ってしまいましたが、2ヶ月ほど前、北総線・東松戸駅で人身事故に遭遇、その時、考えたことを書きます。

土曜日午後、お茶の水での仕事を終わって、自宅のある千葉ニュータウン中央駅に向かう北総線・東松戸駅でのこと。「スカイライナー通過のため、この電車は3分ほど停車します」のアナウンス。電車内でうとうとしていた私は、スカイライナー通過と同時に、「生まれてこのかた聞いたことのない激しい警笛」に身体が一瞬宙に浮いたように感じました。

突然、ホームの天井から30㎏ほどもありそうな看板が落下しました。地上すれすれでワイヤーにつられて看板が揺れています。「生まれて聞いたことのない激しい警笛」と看板の落下で、目の前にいた男子高校生がとっさに私の隣り座席に身を避けました。この間わずか1,2秒のできごと。

最初は、スカイライナーの激しい警笛音で看板が落ちたのかと思いました。が、それにしても、音の振動程度で、頑丈に固定してある駅構内の大きな看板が落下するなどありえません。やがて、駅員が慌ただしくかけだし、人身事故だとわかりました。

しばらくして、停車中の電車からホームに出ると、私の足下にその人の野球帽が落ちていました。若い人の帽子ではないなと思いました。15分程度で何事もなかったかのように電車は動き出しましたが、千葉ニュータウン中央駅に着くまで動悸が収まりませんでした。

電車の中で考えていたことが2つあります。1つは、この人に起こったつらいできごと、人生に絶望したできごとは何だっただろうということ。動き出した車内を見渡せば、十人が十人スマホに見入って、中にはゲームを楽しんでいる。一方で今の人身事故。あまりに両極端の現象に深く考え込んでしまいました。

それと、もう一つは私の仕事。社会保険労務士として、精神や身体に障害を負い、生活に困難を覚える方々の「障害年金」を国に請求することを仕事にしています。とりわけ、精神の病においては、過去からの経緯を詳細に伺い、それを書面にして医師の診断書や必要な書類を整えて国に請求して行きます。

困難な方々の生活を国の制度で支えるという仕事に関わっていますが、今回の人身事故の当事者を支える国の制度はなかったのかと考えます。家庭、夫婦、人間関係などは、国の制度では何ともしがたいですが、経済的なことなら何とか国や行政での救いの道が残されているはずです。

人の心の内は他人にはわかりません。ですが、とにかくあきらめないでと繰り返し声を大にして言いたいです。そして、仕事を通して、困難を覚えている人の力に少しでもなりたいと思っています。(2021.9.13)